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 寒山詩かんざんし
 
天台山に隠れ棲む寒山、拾得、豊干の詩集。「三隠集」ともいう。唐末五代にその一部が知られ、宋代に入ってほぼ現形となる。その詩の流行とともに、三隠の伝説もまたしだいに発展した。『大平広記』五十五や『宋高僧伝』十九、『伝灯録』二十七等の寒山伝はその初期に属し、淳熙十六年(1189)に志南がまとめた「天台山国清寺三隠集記」や、閭丘胤撰する「寒山詩集序」はその後期の姿を示す。この詩集の成立は、それらの伝説と切り離せない。『唐書芸文志』は、すでに七巻本の存在を伝えるが、今日われわれに見ることのできるテキストは宋代以後のものであり、おおよそ次の六種となる。
  1. 宋版寒山詩集 一巻。 豊干拾得詩附 宮内庁書陵部蔵(昭和三年、審美書院覆印)
    この本は、はじめに観音比丘無我慧身が聖制古文によって補った首欠の序と、閭丘胤の序があり、ついで朱晦庵与南老帖、陸放翁与明老帖を附し、本文七十二葉の末尾に山中旧本云々の刊記あり、さらに禹穴沙門志南が撰する前述の「三隠集記」、および華山可明の跋がついている。可明の跋は、屠維赤奮若の年に書かれていて、おそらくは紹定二年(1229)に当り、これが現存最古のこの詩集の開版年時である。
  2. 寒山詩集 一巻、附豊干拾得詩 民国五年(1916)、張鈞衡輯「択是居叢書」初集
  3. 寒山詩 一巻、附拾得詩一巻 民国十八年、商務印書館「四部叢刊」集部(景建徳周氏蔵景宋刊本)
  4. 五山版寒山集 一巻 正中二年(1325)、宗沢禅尼刊
    大谷大学図書館蔵。別に昭和三十三年に、石井光雄が家蔵の本によって覆したものあるも、拾得、豊干の詩を欠く。
  5. 朝鮮版寒山詩 一巻(版心は三隠)元貞丙申(1296)、郭CX-2877
    杭州銭塘門裏車橋南大街郭宅紙鋪印行のテキストの重刊。この本は、後半に『慈受深和尚擬寒山詩』を付す。かつて、3の「四部叢刊」初印の底本とされたもの。
  6. 御選妙覚普度和聖寒山大士詩、御選円覚慈度合聖拾得大士詩 一巻
    『御選語録』三に収めるもの。雍正十一年(1733)の「御製序」を冠し、末尾に豊干詩を付す。
『寒山詩』は、清の「四庫全書」にも入るが、その「総目提要」百四十九の説明はすこぶる不備である。むしろ、この作品は中世以来の日本人に愛誦され、多数の注釈書を生む。次にその代表的なものを掲げる。
  1. 寒山詩管解 七巻 連山交易撰、寛文十二年(1672)刊
      「寒山詩集管解」「寒山詩意抄」「寒山子詩集管解」ともいう。
  2. 寒山詩索賾 三巻 大鼎撰、文化十二年(1815)刊
  3. 寒山詩 一巻 太田悌蔵訳註、昭和九年刊(岩波文庫)
  4. 寒山 一巻 入矢義高注、昭和三十三年、岩波書店刊(中国詩人選集5)
  5. 寒山詩 一巻 入谷仙介・松村mojikyo_font_013885訳注、昭和四十五年、筑摩書房刊(禅の語録13)
最後に、以下の部分訳一篇あり。
  • Burton Watson, Cold Mountain. New York: Grove, 1962.
(禅籍解題 240) 
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 Last Update: 2003/02/21