さし藻草 卷之一 [ 2 / 29 ]
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敷候へども、殿下の義は、天性 仁恕の御志し厚く渡らせ 玉ひ、御領内の萬民をも殊の外 御憐怋被爲遊、御家中の諸 賢をも、常々御愛賞被爲 遊候事、當時無雙の評判 承及び、如何斗り悦び入、終に 《二丁オ》 默止する事能わず、尋常纔かに 憶持し記持する所の古しへの 仁君賢士の遺言往行、既に 十數紙を書す。筆を留めて熟ゝゝ 顧ふに、君子に對し片言隻字 を進むるに、必らず急緩有り、先後 有り。一國の主として萬民の 《二丁ウ》
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