さし藻草 卷之一 [ 16 / 29 ]
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色黒く、鼻ひしげ、ほう先き高く、 見苦るしきお多福と云へる美人を 擇び擇んで、二三人に過ぐべからず。 此外は八九才の兒女子成共、一人も 椒房の邊りへ寄せ近かづくべ からず。是即ち椒房不斷無事 安樂、御主君御壽命長久大祕 《一六丁オ》 密の定法なり。譬へば此に 層臺飛殿有て、石崇が富 貴に誇り、始皇が憍奢を 窮めて、歌臺の暖響、春光 融々たり、舞殿の冷袖、風雨 凄々として、李娘は紫錦の裳、 角婢は紅羅の襪、華質紅顏、 《一六丁ウ》
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