さし藻草 卷之一 [ 18 / 29 ]
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無間の惡處に墮して、無量 劫數の苦患を受く。打見 たる所は、綾羅錦繡を重ね 纏ひて、止ごとなき雲の上人 におわせど、罪深かき所は、 民間竈下の奴婢臭婆の 類ぐひには、遙かに劣りと云んか。 《一八丁オ》 世間の人君國王もまた宜しく 心得おわすべき事なり。自己の 暫時の榮耀をきわめ、自 身の淫樂を極めんが爲めに、 罪なき人の子を集め抱へて、 黎民の膏油に飽しめ、 暖かに着、恣にふさしめ、吝 《一八丁ウ》
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