さし藻草 卷之一 [ 6 / 29 ]

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御顏色の樣子、弱に御見へ被成候。
是は定めて日頃御持病の痔
疾の御痛み故と推察致候へ共、
昔の五人力の御元氣は透と
相見不申、第一は水分御不足と
見請け申候。寔に一髮千均[鈞]、
至極御太切の時節に候。隨分萬
      《六丁オ》
事御愼み、御養生第一なるぞと、
御覺悟可被爲成候。尋常並ゝゝの
國主にておわさば、其分の御事に
侍れど、殿下は格別御仁徳厚く
渉らせ玉ひ、常に萬民を赤子の
如く憐せさせ玉ふ由、日頃承り
侍れば、陰ながら至極御太切に
      《六丁ウ》


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