さし藻草 卷之一 [ 21 / 29 ]

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恃み、威權に誇りて、萬民を
貪ぼり苦るしめ、美女を貯
へ、奢を窮わめて、有らぬ様
成る罪障を積みかさねて、
死後には必らず三塗の難所に
墮す。是故に云ふ、癡福は三
世の冤なりと。癡福とは何や。
      《二一丁オ》
譬へば茲に信心の後世者有
らんに、見性得悟の願心無く、
四弘誓の菩提心を發せず、
唯單々に自利の善行のみ有て、
佛を求め、祖を求めて、多拜し
多禮して、萬善行を修す。
是を癡福と名づく。三世の冤也。
      《二一丁ウ》


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