さし藻草 卷之一 [ 27 / 29 ]
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我らは遙かに餓鬼修羅等の 四趣をも超過し、光音梵輔 等の天上の善果に勝れる人 間界に出生したれば、浮木の 龜や優曇華の華、待ち得 たる心地なるはとて、飽まで 食らひ、暖かに着て看經せず、 《二七丁オ》 坐禪せず、善友の提攜にも隨 わず、智者高僧の法施の席にも 臨まず、因果有る事も知らず、 來生三塗の苦患有る事おも 恐れず、徒に放逸無慚にして 一生を送らば、外面は受け難き 人身を受けたるに似たりと云へ 《二七丁ウ》
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