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五山文学研究室

関連論文:『仙翁花 ―室町文化の余光― 』




【第8回】 包装して贈る

 このように、『日録』では毎年七夕前をピークにして仙翁花の贈答が同じように記録されているので、以下は省略して特記すべき事項を中心に取り上げる。

○文明十九年(1487)
  • 七月六日。大昌院より仙花六十茎、之を恵まる。東福鶴巣軒、仙花一筒九十五茎。又た一包八十一茎。裕侍史一包五十茎。以上二百廿六本。常喜軒より仙花廿五茎、之を恵まる。仙花廿一茎、賢季才、之を恵まる。…晩、仙花一包八十茎、丹公を以て之を献ず。同じく一包、春日殿、同じく一包、冷泉殿、同じく一包、堀川殿へ之を贈る。仙花一筒、桂子を以て西御所へ献じ奉る。大蔵卿之を預かる。同じく一包、大蔵卿へ贈る。

「一包」という数え方は前にも出たが、花を何らかの方法で包装してあることを意味しよう。その包み方はどのようなものだったのか、興味をひかれるところである。包装についての記述は後にもまた出るので、そこで考える。

○長享二年(1488)略。

○長享三年(1489)
  • 七月四日。寿徳院より草花一筒来たる。之を献ずるに足らず
  • 七月六日。草花数十茎、後藤佐渡宅に贈る。蓋し相公に献ずるに足らざるを以ての故に之を贈る。

ここには単に「草花」とのみあるが、先回みたように、「仙翁花」は単に「花」とも呼ばれることもある。いまは七夕直前、仙翁花の季節であり、ここで主役となる「草花」は仙翁花であり、この花を中心にし、他の桔梗・菊などを含めて「草花」という。また、右の二例では、将軍府へ献上するには草花の状態があまりにもよくないことを記している。そして、その二級品は後藤土佐守に送り与えられている。献上品の点検と吟味が行われているのである。

○延徳二年(1490)
  • 七月七日。早旦、久也・昌也に命じて、進上の花を調えしめ、桂子に命じて進上の仙翁花数十茎、之を包ましむ。又た一包、三もて一と為す。仙花・白菊・桔梗の三種なり。乱りに插して両御所へ之を進上す。

仙翁花を中心に、これに白菊と桔梗の花を配して、何らかの方法で包装をして、御所に奉呈したのである。「調えしめ」「包ましむ」というから、一種の意図をもった装い、立花でもなく生け花でもないフラウワー・アレンジメントともいうべきことが行われたということであろう。

初出『季刊 禅文化 186号』(禅文化研究所、2002年)

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 Last Update: 2003/07/13