花園大学国際禅学研究所
    
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白隠フォーラム in 宇和島
開催報告

 2025年9月28日(日)午後、宇和文化会館(愛媛県西予市)にて「白隠フォーラム in 宇和島」が開催されました。当日は、約80名の方が会場に御参集くださいました。
 フォーラムは、飯島孝良(弊所副所長)のコーディネートのもと、以下のように展開されました。

○開会の挨拶
松竹 寛山老師(禅文化研究所理事長・平林僧堂師家)

◯講演Ⅰ「大乗寺と遼天宜頓:四国における白隠禅の嚆矢」
河野 徹山 老師(大乗僧堂師家)

 南予地方に伝わって来た臨済禅の系譜、白隠禅師に参じて四国にその教えを伝えた遼天宜頓(大乗寺八世住持)の人となりを、平易にお示し頂きました。遼天宜頓は宇和島の豪商・法華津屋の生まれで、自らの出家した大乗寺の住職になり、火災で焼失した伽藍の復興に尽力、妙心寺からも瑞世を望まれるも固辞した、との逸話が伝わります。

◯講演Ⅱ「大洲藩加藤家と禅」
山田 広志 先生(大洲市教育委員会)

 盤珪禅師や如法寺をはじめとした臨済禅とゆかりのある大洲藩加藤家について御話し頂きました。槍禅一如の心境を極めんとしていた加藤泰興公が盤珪禅師に参禅し、或いは加藤泰衑(やすみち)公が三島宿で朝鮮通信使の御馳走役を務めた際、加藤公と臣下の者たちが六十四歳の白隠に接する機会があるなど、数々のエピソードを御紹介されました。また、寛延三年(1750)に発生した「内の子騒動」についても言及されました。これは、大洲藩の庄屋や富農による横暴な課役に苦しんだ百姓が引き起こした農民一揆で、その猛烈な運動で百姓側の要求のほとんどを藩に認めさせるものとなりました。しかし、一揆指導者の処分を不問にするという約束は1ヵ月後に破られ、一揆後に十数人が召し捕られ、拷問の末に入牢や追放、閉居の刑に処せられたということです。

◯講演Ⅲ「白隠禅師と近世の吉田藩・大洲藩」
芳澤 勝弘 先生(弊所顧問)

 まず、参勤交代などによる財政難が百姓への負担となっていたことを背景に、大洲の法華寺、内子の高昌寺・願成寺の取り成しで首謀者の詮議が不問に付されてひとりも犠牲者を出すことがなかったものの、一か月後にこの約束が反故にされてしまった――といった内の子騒動をめぐる論点を整理頂きました。そうした地方の百姓が苛まれる現状を『辺鄙以知吾』や『壁訴訟』で痛烈に批判していた白隠と加藤泰衑公とには接点があったと考えられ、「布袋吹於福図」が大洲に寄贈されたのもこうした縁によるものではないか、との御指摘もありました。また、さらに、白隠が伊予吉田藩の豪商である法華津屋・高月狸兄の肖像を描いて梁田蛻巌(やなだ・ぜいがん)に賛文を書いてもらうなど、白隠と法華津屋との交流についても御話し頂きました。

○登壇者による鼎談

 会場では、法華寺蔵(大洲市立博物館寄託)の「布袋吹於福図」ならびに大乗寺蔵の白隠画「達磨図」や遼天宜頓の墨蹟などを掲出し、実物を観賞しながらのギャラリートークも行いました。

○閉会の挨拶
横田 南嶺老師(花園大学総長・禅文化研究所所長・円覚僧堂師家)

 白隠禅は、大乗寺僧堂でも花園大学でも今も挙揚されており、このことがまた百年の後には歴史になっていくことを願いながら、参加者諸氏には大乗寺や花園大学を引き続き御愛顧頂きたい、との御挨拶がありました。
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 今回の開催周知には、大学同窓会ならびに四国東西教区の御協力を賜りましたことで、愛媛県内在住の方を中心に、四国の他県(高知県など)や首都圏(埼玉県・神奈川県など)からも多く御参加頂くことが出来ました。御協力賜りました皆さまには、この場をお借りして深く御礼申し上げます。

フォーラム参加者からは、以下のような御感想を頂戴しました。
*「四国における禅文化の深さを学ぶことができました」
*「三名の方のお話が有機的につながって、とても有意義で面白かったです。コーディネーターの先生の意図が伝わりました」
*「楽しい講義 時の経つのを忘れる程 当地の歴史も判りました」
*「フォーラムの続編を期待します」
*「白隠様の事がわかりやすく、すばらしかったです」
*「様々な地方で開催される事は大変良い事と思う」
*「勉強不足で高度な内容に感じるところもありましたが、地元のお話でしたので興味深く拝聴しました」
*「白隠禅師と高月家法華津屋との歴史的関係がよくわかりました」
*「大変ありがたい企画で、地元に生まれ育ち乍ら無知を恥じるばかりで、ただただ感謝するばかり」
*「わかりやすい解説に感動しました。白隠のとりこになります」
*「大変勉強になりました。特に大乗寺露香室老大師の話がわかりやすかった。芳澤先生の話はいつ聴いてもおもしろい」

 寄せられたご意見のなかで特に目立ったのは、フォーラム続編を期待する声や、他地域を巡回しての白隠フォーラムの開催を希望する声でした。とくに、会場で8本ほどの白隠とその会下の墨蹟が掲出され、実物をみながら往時の四国における白隠禅を感じ取れる構成としたことで、御参加の皆さんには大いにお楽しみ頂けたようでした。
 今後もフォーラムなど、さまざまなイベントを開催してまいります。国際禅学研究所の諸活動に御愛顧賜れますと幸いです。どうぞ宜しくお願い致します。
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【追記】白隠さんの会との連動企画「ブラ白隠 in 宇和島」ツアー
なお、今回のフォーラムは妙心寺派宗務本所教化センター内「白隠さんの会」主催のバスツアー「ブラ白隠 in 宇和島」との連動企画となり、このツアーには東京や静岡といった遠方から御参加頂いたとのことです。

(盤珪禅師ゆかりの如法寺では、御住職の木之本義道師と地元の有志「如法寺もりあげ隊」の皆さまに御迎え頂く)

(大乗寺ならびに国安の郷では、河野徹山老師が直々に御案内)