於仁安佐美 巻之上
当時27歳と23歳であった、中御門天皇の皇女である宝鏡寺および光照院門跡の姫宮に与えた法語である。
禅師は、寛延四年四月、京都滞在中に幾度か、この門跡寺院に参上して法話を行ったことがあるが、この門跡寺院で、多くの侍女や側つきの尼僧にかしずかれての生活ぶりを見たのであろう。やんごとない姫宮の贅沢な日常生活、きらびやかな衣装、禅寺でありながら掃除はすべて召し使いにさせていること、などをあげて率直な言葉で批判し誡めている。天皇の姫宮に対して、歯に衣をきせぬ苦言を呈したことは、当時、都でも噂になったほどであった。
そして、本書の中心は、白隠禅の眼目である「動中の工夫」によって真の禅を修めることを勧めていることである。静かな所で禅寂を味わっているだけでは、何の定力も得られない、煩雑な日常生活の中でたえまなく正念工夫相続していくことによってこそ、真の定力が得られるのである、と。