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関連論文:『画賛解釈についての疑問』 |
■はじめに
『禅林画賛――中世水墨画を読む』(島田修二郎・入矢義高監修、毎日新聞社、昭和六十二年九月)は画期的な企画である。「凡例」では「鎌倉中・末期から南北朝、室町期までの代表的な水墨画で、とくに像賛・題詩のすぐれたもの百五十四点を厳選、収録した」ものであるという。その中には国宝が八点、重要文化財が五十九点、重要美術品が五点含まれている。冒頭の「刊行にあたって」では、「従来の美術書では、……画賛があっても、多くは無視され、写真図版として掲出されることも稀で、ましてその読解に意の払われることは皆無であった」とし、賛は「その画を観た同時代者によって発せられた最初の言葉、最初の証言である」という観点から、禅林美術を画と賛の両面から解釈・鑑賞しようという趣旨が述べられている。この点で画期的な刊行物であったと言えよう。 本文は、賛の(一)原文、(二)語註、(三)現代訳、そして(四)解説の構成になっている。(一)から(三)が、賛の詩文に対する語学的解釈であり、(四)では画家及び賛者、ならびに画に対する美術的および美術史的な解説が述べられている。(四)の解説は、これまでの美術史研究の精華を総覧しており詳細を極めている。既に本書は中世美術史学徒のためのバイブル的存在となっているというのも肯える。美術史の門外漢である筆者などは、大いに教えられるところがあったものである。 これに比べて、(一)から(三)の部分、すなわち賛文の釈文と解釈に関わる部分には、少なからぬ問題点があると感じたのである。 問題点の概要を整理すれば、およそ次のようになる。
本書で扱われている画賛は、そのほとんどがいわゆる「五山文学」の範囲に入るが、厳密にいえば、すべてがそうだというわけではない。本稿では五山の詩文に顕著な修辞を問題にしたいと考え、副題は敢えてつけたものである。 初出『禅文化研究所紀要 第25号』(禅文化研究所、2000年)
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