花園大学国際禅学研究所
    
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【白隠フォーラムin東京】講演録
2008/2/14

司会 トーマス・カーシュナー

トーマス・カーシュナー氏

花園大学国際禅学研究所の研究員、トーマス・カーシュナーと申します。本日の司会をつとめさせていただきます。

本日のフォーラムのテーマであります白隠禅師については、ここにお見えの方は皆さん御存知だと思いますが、現在の臨済禅の中興の祖であります。富士山のふもと、東海道の宿場町の原という所にお生まれになって、15歳で出家し、文字どおり命懸けの修行をされた。その後、その生まれた原の町の小さい松蔭寺というお寺の住職になって、そこでたくさんの優秀な弟子を育てたわけです。その弟子、その子孫が禅の日本臨済禅の主流となって、今、臨済禅の活動をしている、専門道場のお師家さん、指導者が全部白隠禅師の系統です。修行道場の生活も修行法も、この白隠派の臨済禅に大きく影響されてできたものです。文字通り現在の日本の臨済禅は白隠禅であるわけです。

それなのに、意外と白隠禅師のことは知られていない。今の若い日本人でも、道元禅師や一休さんとか良寛さんなら誰でも聞いたことがあるでしょうが、白隠禅師のことを知っている人は意外と少ないです。世界に禅を紹介した鈴木大拙先生は、主に唐・宋時代の禅の人に非常に興味があって、日本では盤珪永啄
(ばんけいようたく)のような禅者には関心がありましたけれども、あんまり白隠禅師に目を向けなかった。ですから、そういう入門書程度で禅のことを知っている人は、あまり詳しく白隠禅師のことを知らない人が多いです。

私もそうでした。40年ほど前アメリカで禅に興味を初めて抱いた時に、英訳の本はだいたい鈴木大拙の本ぐらいしかありませんでした。それを読んで中国の禅とか、日本の禅人の生活はある程度知ったんですが、白隠禅師のことはあまり出て来なかった。ある程度、白隠禅師のことを聞いたのは日本に来てからもう少し本格的にやろうと思って、じゃあ禅の歴史をもう少し勉強しようと思ってからでした。当時これは意外と日本人じゃなくて、イエズス会の神父さんが書いた、デュモリン神父というイエズス会の神父さんが書いた『禅の歴史』という本があって、それを読んで初めて白隠禅師のことをある程度知ったわけです。

しかし、これによって、今から見ると偏った一つのイメージができた。非常に厳しい融通のきかない禅僧というイメージを持ったわけです。若くして出家し、命がけで修業して悟った。そして悟ったあとに病気をしたが、薬医療ではなく、精神的な力で治した。指導者になってから、もう何人もの弟子が死んだくらい厳しく指導して、そのやり方も坐禅一本で、念仏は一切許さないという、そういう非常に融通のきかないような人だというイメージを持ったわけです。

私が一番最初に坐禅修行をした専門道場は、三島の龍澤寺です。龍澤寺には開山堂に白隠禅師の彫像があるんです。まさに力強く、大きな目がグルッとなったもので、その姿勢も見るだけで怖くなるようなものです。多分当時の参禅の弟子は汗を流して体が震えるぐらいの思いで参禅したと思います。

私にとっての白隠とはそういうイメージでした。特に修行者を叱咤し励ますものだと思えば、そういうイメージはそれでいいと思います。けれども、それだけだとこの偉大なる白隠禅師の他の面を見失うような気がします。厳しさだけでは、その人間性、人間としての幅の広さ、そういうものが分からなくなるような気がします。一般に関心を持つ人が少ないのはそのためかとも思います。今までは学問的研究の対象にも、あまりなっていなかったわけです。

しかし、そういう硬い白隠禅師、そういう厳しい融通のきかない白隠禅師というイメージは、これが極めて一面的であるということは、主に今日の発表する先生たちの研究と教育活動によって明らかになったと思います。白隠禅師を知るためには、宗門内の狭い研究では駄目だと思います。白隠禅師は教育者としても非常に優れていた。幅広く当時のありとあらゆるものを利用して教化活動をやりました。当時のニュースとか、はやっている歌とかを全部利用して出家、在家を相手にして教化活動に励んでいたわけです。

従って本当に白隠禅師の教育者としての力量を分かるためには、幅広く江戸時代中期の歴史、文化などを詳しく知らないと、例えば法話などの意味は分かりませんし、特に、今日の主なテーマになる禅画とか墨蹟の意味は分からないと思います。
そういう幅広い研究を初めてやられたのが、私の知っている限りでは、今日、一番最初に発表してくださる芳澤勝弘先生でございます。それでは今日の発表を順に始めていきたいと思います。それでは芳澤先生よろしくお願いいたします。



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