2018年7月17日(火)に弊学教堂で開講された公開講座「禅とこころ」において、弊所所長の野口善敬が「無我と主人公――中国明代末期に於ける「主人公」論争」と題し、講演を行いました。
講演では宋代から元・明を経て清代に至る中国禅宗史の流れを概観したうえで、明代末期に仏教の復興運動が起こったこと、のち臨済宗・曹洞宗において「主人公」をめぐり論争が行われたことを紹介しました。
「主人公」とは禅門において参究される絶対的な主体性のことで、例えば『臨済録』では「一無位の真人」や「無依の道人」として提示されています。ところが仏教では古来「無我」を唱え、恒常的な自我の存在を否定します。そのため、「無我」と「主人公」の関係をめぐり、明代末期に一大論争が起こりました。
論争のなかで、「無我」の立場に立つもの、「主人公」に立脚するもの、その両方をともに斥けるもの、更には両方の意義をともに認めるものなど、さまざまな説が提示されました。ただし究極的には、みずから開悟し体得するより他ないというのが、実践を重んじる禅門の立場ということになる――以上が本日の講演の概要になります。
公開講座「禅とこころ」は、花園大学の建学の精神「禅仏教による人格の陶冶」をテーマに開設されたものです。前期・後期それぞれ15回を予定しており、野口は引き続き来年1月15日(火)に、「中国思想における心」とのテーマで再度講演する予定です。詳細については下記ページをご覧ください。
また8月24日(金)には「中国明清時代の禅宗と日本」というテーマで、平成30年度夏季講座(臨済宗妙心寺派花園会本部)にも出講する予定です。こちらの詳細につきましては、下記ページをご覧いただければ幸いです。
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