八重葎 巻之一 高塚四娘孝記
宝暦9年(1759)の著。両親に死なれ孤児となった遠州高塚の四人姉妹が、祖父のすすめによって、両親の菩提をとむらうために、三年かかって法華経の仮名写経をなしとげた。これを聞いて感心した白隠が、法華経の功徳を説くためにまとめたものである。
けれども、この副題の内容の物語は、108丁ある本書の内でわずかに20丁を占めるに過ぎない。それに先立つ大部分で語られるいくつかの物語は、死んで地獄に堕ちた者が生還して娑婆に戻り、地獄のありさまをつぶさに語り告げる、という蘇生譚である。その意図するところは、『八重葎』巻之二と同じである。