壁生草
明和4年(1767)の著。禅師の最晩年に書かれた自伝である。本書の巻下の部分は、内観と軟酥の法を説いた『夜船閑話』をそのまま付け加えたものである。
禅宗史の中で禅僧の自伝というものはかなり珍しいものだが、白隠禅師は複数の自伝を書いている。『八重葎』巻之三、附たり幼稚物語がそれであるし、『夜船閑話』も一種の自伝と言ってよい。
禅師の他の仮名法語でも、自伝的記述が多くみられる。禅僧の行履は、たいていはその弟子によって編まれた行録・行状といった年譜などで知れるのだが、白隠禅師の場合は、このような自伝および自伝的記録が多いのが特徴で、これらはまた禅師の生涯研究の好資料となっている。