ホーム > 研究室 > 五山文学研究室 > 関連論文 > 画賛解釈 (目次) > 【17】「抉鬼眼睛嗔摺頤」

研究室  


五山文学研究室

関連論文:『画賛解釈についての疑問』


【第17回】 「抉鬼眼睛嗔摺頤」
鍾馗抜鬼眼図
([49]、144頁、賢江祥啓筆、称意東永賛、頴川美術館蔵) 註釈者不明

……藍袍進士一鍾馗 (藍袍の進士、一鍾馗)
抉鬼眼睛嗔摺(鬼の眼睛を抉って、おとがひ嗔摺てんせふす)……

 『禅林画賛』では「嗔摺」の註に「〈嗔〉は怒ること、〈摺〉はくじくこと。和習の造語としても甚だ異様。意味不明」とするが、「嗔摺てんせふ」と区切ることがそもそも誤りであろう。註に言うように、「摺」はくじくことであるから、「摺頤」は、あごをくじくのである。

 諸橋『大漢和辞典』の「摺」の項には「摺歯」とあり、『史記』范睢伝の「折脇摺歯」の例を引いている。そして『続文章軌範』揚雄の「解嘲」に「折脇摺mojikyo_font_045227、免於徽索……(脇を折られmojikyo_font_045227こしぼねをくじ摺かれて、徽索より免がれ……)」、また『史記』列伝第一八、春申君に「刳腹絶膓、折頸摺頤、首身分離……くびを折りおとがいくじき)」などとある。

 したがって「鬼の眼睛を抉り、嗔って頤をくじく」と訓ずればよいであろう。図で見れば、鍾馗の右手は鬼の目を抉り、左手は頷をつかまえている。その行為を表現したまでである。
初出『禅文化研究所紀要 第25号』(禅文化研究所、2000年)

ContentsFirstBackNextLast
▲page top  

 Last Update: 2003/06/24