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五山文学研究室

関連論文:『画賛解釈についての疑問』


【第23回】 「臨水之境、洞山之嶺」「洞山栽松」
松雪山房図
([79]、245頁、筆者不詳、大和文華館蔵) 註釈者不明

松雪山房記(華嶽建冑題記および詩)
……臨水之境、洞山之嶺、唯言松而已。


 『禅林画賛』では註で、「臨水之境」の註に「未詳。洞山良价とは別の人物でこれと想定できる人はない。洞山は水を渡る時に自らの影を見て悟ったという経験がある」とし、「洞山」の註では「江西省高安県にある。……」と洞山良价を言うけれども、いずれの註も非。

雪山房」をテーマにしているのであり、序にも「臨水の境、洞山の嶺は、唯だを言うのみ」とあるのだから、いずれも「松」に因む話でなければならぬ。「臨水之境」は臨済義玄のあまりにも有名な「臨済栽」の故事を言う。
栽松次、黄檗問、深山裏栽許多作什麼。師云、一與山門境致、二與後人作標榜。道了將钁頭打地三下。黄檗云、雖然如是、子已喫吾三十棒了也。師又以钁頭打地三下、作嘘嘘聲。黄檗云、吾宗到汝大興於世。(『臨済録』)
洞山は、註釈者がいう洞山良价ではなく、後洞山師虔禅師すなわち青林和尚のことである。その故事は次のとおりである。『伝灯録』巻一七、後洞山師虔禅師[第三世住也亦號青林和尚]の章に、
師在洞山栽松。有劉翁者從師求偈。師作偈曰、長長三尺餘、鬱鬱覆荒草。不知何代人、得見此松老。劉翁得偈呈于洞山。洞山曰、賀翁翁喜。只此人是第三世也。師先住隨州土門小青林蘭若。後果囘洞山接踵。
初出『禅文化研究所紀要 第25号』(禅文化研究所、2000年)

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 Last Update: 2003/06/24