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五山文学研究室

関連論文:『画賛解釈についての疑問』


【第29回】 「上方臺殿絶還連、靄々春雲簇暖烟」
古寺春雲図
([95]、305頁、筆者不詳、個人蔵)註釈者不明

詩三、(与可心交贊)
上方臺殿絶還連、靄々春雲簇暖烟。
似警殘生昏怠意、晩風吹落臥鐘邊。


 『禅林画賛』では初句を「上方の臺殿、還連を絶ち」と訓じ、「還連」に註して「〈還〉は〈環〉と通じるので、〈絶環連〉で、古寺がまわりの世界から孤絶しているの意であろう」とし、「上方の臺殿はまわりから孤絶して聳え」と訳す。

 絵では、建物の周囲を白い雲が取り巻いている様が描かれている。そこのところを、詩二では「春雲籠古寺」といい、詩五では「春雲深擁梵王家、樓閣有無橋路斜」、詩六では「喬木前朝寺、春雲終日封」、詩八では「蘭若白雲裏」と歌っている。
 つまり、寺がすっぽり春の雲につつまれ、その一部が姿を現しているのである。したがって、ここは「上方の臺殿、絶するかた連なるか」と訓ずるべきであろう。「寺の建物は、ここに見えているだけか、それともまだ連なっているのだろうか」という解の方が自然というものだろう。
初出『禅文化研究所紀要 第25号』(禅文化研究所、2000年)

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 Last Update: 2003/06/24